パートT


 しとしとと雨の降る日だった。確かその日のサブゼミは以前に各々が考えた文献のテーマを決める日だったのではなかろうか。傘を買うお金すらない私は水道橋駅から、サブゼミの行われる教室まで走った。教室は改修工事が行われる以前の4号館であったと思う。途中、当時上流家庭ですら一家に一本といわれた“傘”をさした男の横を、私は頭を俯けたまま走り過ぎた。
 
 4号館に着き、上着についた水滴を払い、教室へ行こうと階段へ足をかけようとしたそのとき、私の名前を呼ぶ声がした。振り返ると先ほどの“傘”をさした男が、まさに“傘”を閉じようとしていた。「無視しないでよ」と苦笑しながら細くたたまれていく“傘”の影から姿を現した男は、ゼミの仲間であるN君だったのだ。

 階段を上るとすでに数人が集まっていた。いつもお菓子を持っている慈悲深い仲間から私は何か恵んでいただいた。何ヶ月かぶりに口に入れた食料は私の体の隅々から水分をかき集め唾液として抽出させた。唾液に解けた栄養素は体中にいきわたった。五臓六腑に染み渡るとはこのことだと痛感した。
 
 本題はここからだ。ゼミ長の話によると教室を借りた時間までしばらく時間があるというのだが、中に誰か潜んでいるというのだ。ここは東京砂漠のど真ん中。当時9.11同時多発テロはまだ記憶に新しかっただけに、何が潜んでいてもおかしくなかった。我等がゼミ長は意を決して強行潜入を試みた。中にいたのは・・・・・・。



知りたい人は本ホームページ掲示板の つのだ☆ひろ さんに聞いてください。


このお話の大部分は事実をもとに構成されています。