5.1期生 映像解説 



 2005年6月、学部祭でのフォーラム発表に向けてテーマを考え始めた。

 各個人、一人一つずつ、自分の考えたテーマをプレゼンテーションし、 意見や突っ込みを入れていく形で企画の選定が始まった。
先代までの作品は、個人に焦点を当て、日常を追いかけることで、
視聴者に提案するスタイルでのドキュメントが主だったものであった。

それに対し、5期生では、人間を追うスタイルを捨て、問題研究を主とした作品製作に取り掛かった。

現在の日本が経済的に抱えている問題、特に身近に感じる出版界における問題に対して、
全く新しい観点から問題をとりあげ、研究を深めていった。

この問題を掘り下げる為に、夏合宿を利用し、深夜まで意見を交わし、朝を迎えることもあった。


 脚本の進行に合わせ、撮影をスタートさせた。
ぐずついた天候と、進行の遅れから、多少の苛立ちを抱えつつ、撮影が始まった。
都内数ヶ所におけるロケを敢行。ロケハンもアバウトながら、撮影に使用する有名書店や街並みなどを中心に
半日以上にも及ぶ撮影は、出演者のみならず、技術者達全員がとまどいながらのスタートだった。
 

 当時、青山ブックセンターが一度閉店に追い込まれてからの復活を果たした。
その再オープンの当日にロケを試み、担当者の許可を得たうえで、
正面玄関での撮影及び店内の風景撮影を 許可してもらい、
本作のイメージに合う、説得力のあるカットの撮影ができた。
コネクションもなく、アポイントもなく、取材クルーもいる中で、いちゼミナールの撮影をさせて貰えたのは
まさに奇跡と呼べるようなうれしいハプニングであった。


 
撮影に平行して、編集もスタートさせた。
PCでのノンリニア編集経験者が2名いた為、例年よりスムーズに進行できたようだ。

使うソフトがPREMIERE5.1というマイナーなバージョンだったので、初めのうちは 戸惑ったが、
進むにつれ順調にスピードアップし、撮影に合わせて編集が出来た。

便利であり、良かった点は、素材テープが5本以上に渡り、撮影に立ち会わないと、
編集に必要な素材が どこにあるか分からず、ごちゃごちゃになりやすいのだが、今回はカットごとにメモを残し、 タイムシートにまとめた。

そうする事によって、混乱を回避し、スムーズな編集が実現できた。


  編集が進むにつれ、素材が足りなくなる自体が多々見受けられた。
内容に合わせた映像を用意したいのだが、ナレーション原稿に合わせたカットが少なかったのだ。

そうカット数が300を越え、見ている人を飽きさせないようにするのが目的だったのだが、
このために、編集の傍ら足りない素材を羅列し、撮影に向う撮影班の身軽な姿に脱帽。

1時間ほどで水道橋・神保町間の本屋を巡って撮影を敢行し、解決した。

ドキュメント形式は、ドラマやバラエティーと違い、イメージだけで編集できない。
テーマにある問題点を考え、掘り下げるたびに、ナレーション原稿の変更を余儀なくされる。
今回もそのようなケースがあったのだが、柔軟な対応をすることが大切だと思った。


 
撮影に際し、たくさんの人々の協力があって、はじめて形にすることが出来た。
インタビューを受けてくださった教授・ブックオフ利用者・出版関係者。
店内撮影を許可してくださった、青山ブックセンター。編集班。脚本班。
そして、無茶な新しい絵を求め続けた映像班。
個人的に文献班。
ゼミ生全員で作り上げた映像は、フォーラム内での発表に合わせることは出来なかったが、
後日発表というかたちで、80名近くの視聴者に見ていただけた。

 
内容としては、流動的なものなので「完璧」とまでは言えなかったが、
自分たちの考えた事を 25分あまりの映像にまとめ発表できたと言う機会は貴重なものであったと思う。

「人に伝える難しさ」 それを肌身に感じ、ベストな作品を作る為に考え、失敗し、また考え、
創造した時間は 何物にも変えがたい大学生活の1ページになった。






5期生  池永眞人