6期映像解説
 
 
 映像作品のテーマが最終的に決定したのは、7月の夏合宿だった。
 それまでの授業で様々なテーマ案が提出され検討されたが、「本当に映像作品として取り上げたいテーマなのか」「浅い議論で妥協してしまってよいのか」といった問題で、夏合宿まで先延ばしされてしまった。
 
 合宿では取材の進め方や文献作品との折り合いなどの問題が話され、一部紛糾する場面もあったが、徹底的に意見を戦わせゼミ生一人一人の気持ちが確認し合えたことは良かったと思う。
 「映画界の現状」を取り上げると決めた当初は、映画界に関する文献資料やデータ、そして自主映画監督の「視点」を中心に構成していく予定であった。だが、2005年当時の日本映画界に関する資料はほとんどなかった。
 加えて自主映画監督それぞれが持つ多様なビジョンを聞き「日本映画の現状」を捉えるにはより多くの素材が必要だと感じた。
 そこで構成や仮定についての話し合いの場が持たれ、映画界の第一線で働いている方々の話を構成に盛り込もうという方針転換が行われた。
 
 その後も取材を進める度、それこそ毎日と言ってよいほど、構成に関しては練り直しが行われた。
 映画界の第一線で活躍する方々へのインタビューは緊張の連続であった。
 インタビューの第一歩となるアポイントメントを取る段階から「文章に失礼はないか」「取材の詳細は今の時点で添付してよいのか」といった不安に悩まされ続けた。

 映画の「プロ」に不勉強では申し訳がないし勿体ないということで、それまで以上に映画に関するアンテナを張り、質問項目を作成した。
インタビュー自体は一応満足のできるものであった。
 それでも全ての取材が終わった今、改めて考えると聞いておけばよかったこと、聞かなければならなかったことを思い出す。
 
 編集段階でも、苦しい作業が続いた。私たちからすれば、取材テープは最初から最後まで上映したかった。
 インタビューさせていただいた方々それぞれに映画に対する強い思いがあり、どれをカットするか大変迷った。
 「インタビューを受けてくれた人の伝えたかったことをカットしてはいないか」「フォーラムを見に来てくれた人が知りたいのは、カットした部分にあるのではないか」といったことを思うと、なかなか作業は進まなかった。
  私たちの仮定や伝えたいメッセージに沿って取材内容をカットし再構成すること、ここがメディアリテラシーを学ぶ私たちにとって最も重要な部分である。
 
 同一の取材対象・内容でも、他の誰かが編集作業を行えば全く違うものになる。
 真剣に映像作品制作に取り組んだ分だけ、メディアリテラシーに関し気付き、そして得るものは大きかった。                               

                                                            6期生 中村健太郎